失敗の科学/マシュー・サイド著 有枝春 訳
ディスカヴァー・トゥエンティワン
私は、「失敗はしたくない。起こしたくない」と無意識に考えていました。この本を読んで、失敗から学ぶことの大切さと、改善の可能性を知りました。
人間の習性の前提を知る
私たちは「自ら失敗を隠したがる生き物」であるといことです。そして、「人はウソを隠すのではなく信じ込む」習性を持っているのだそうです。
私が気づいていることで、起こった事象をヒアリングをすると、双方異なった事実を聞くという事象があります。
これは、各々の主観でものを見ていて、それは事実ではない可能性が高いということです。思い込みや失敗を認めたくないと思う拒否反応の表れですね。
習性と習慣。改善されない失敗の数々
人間の習性が失敗を隠し、帰属する企業が失敗を隠す体質だった場合、失敗は改善されるでしょうか。
本書でのクローズド・ループ現象という表現で事故を隠蔽する体制が表現されており、医療機関の事故事例が示されています。
クローズド・ループ現象とは、失敗や欠陥に関わる情報が放置されていたり曲解されたりして、進歩に繋がらない事象や状態を指します。
アメリカでは、毎年4万4千〜9万8千人もの人が回避可能な医療過誤によって死亡していて、10人に1人は医療過誤による健康被害を受けていると記されています。
医療機関の「調査嫌い」、完璧主義、そして「失敗を隠す」体質等々が、事実をなかったことにしていると考えられています。
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オープンル・ループ現象で事故原因を探る
航空会社の例がありました。
航空機にはすべて飛行データとコックピット内の音声を記録する仕組みがあります。そしてこれは「ブラックボックス」とも呼ばれ、ひとたび事故が起こればブラックボックスが回収され、データ分析によって原因が究明される仕組みになっています。
この仕組みによって以下の通り事故が改善されています。
* 1912年 米陸軍パイロットの14人に8人が事故で命を落としていた。
* 2014年のジェット旅客機の事故率は、100万フライトに0.23回。
10人に一人の医療過誤と、100万フライトに0.23回の事故率。どちらが低いかは明白ですね。
航空業界においては、「不足の自体はいつでも起こり得る」という認識があり、過去の失敗から学ぶ努力を絶やさないのです。
チームスカイの躍進
ツールドフランスでおなじみのチームスカイの事例も載っていました。ロードバイクに乗るので、その名も、強いチームだということも認識しています。
このイギリスチーム(自転車の歴史が浅い)の躍進は、今は当たり前になっているけれど(少なくとも私はそう思っていた)、かなり挑戦的だったことを知りました。
専用マットレスや枕を導入し、場所が変わってもおなじ室の睡眠を得られるようにしたことや、洗剤を見直し快適度をアップしたことなど。
どれも小さいけれど、小さな積み重ねが大きな成果を生んでいることを教えてくれます。
本から何を学ぶのか(私の場合)
仕事で目標達成できないことは、目標の設定が高いからだ。と考えることは簡単です。
なぜなら、自分の手の届かないところを「できない理由」にしているからです。「私が悪いわけではない」という心理であり、直すところはないと現実に目を向けていません。
胸に手を当てて考えています。
* 高い目標を達成するための作戦を私は考えていたか?
* 細切れに取り組みを見ることをしたか?
* 失敗から学んでいたか?
* すでに結果を残せていないものがあり、それは「取組みが失敗している」と考えられるのではないか?
そう、自分自身の失敗を認めることが足りなかった。そして気づくこと。まだ私には失敗の余地があり、成功への道は残されているのです。
この本は、様々な事象が記されています。言葉もわかりやすい。私たちの思い込みや、事実は物語に隠れる場合があることも教えてくれます。
こういう本は苦手、むずかしいと決めつけず、一度手にとってはみてはいかがでしょうか。